【完】『けったいなひとびと』
その日の夜。
当の駿は、例の川崎の柏木のお好み焼き屋に、三浦紫を連れて来ていた。
「やっぱり本場の人が作るお好み焼きは美味しいなぁ」
紫は柏木のお好み焼きが気に入ったようで、
「しかもワインが置いてあるお好み焼き屋さんなんてなかなかないんだよねー」
と、ワイン好きな紫にはありがたいラインナップもあった。
「まぁ今日の災難はワインで流して、明日は明日でゆこうや」
「思い出したんだけど、研修のときから伊福部くんって前向きだよね」
「まぁな、前しか目ついてへんから後ろ見えへんし」
「何か久しぶりに会ったけど、伊福部くんみたいに楽しい男の人の方が私は楽だなぁ」
と、バッグから電話を取り出し、
「今の彼氏なんだけど、仕事は弁護士で出来る人なんだけど…何か物足りなくてさ」
ワインのおかわりを柏木が出す。
「うーん…三浦は彼氏さんと結婚考えとるんか?」
「それがイメージわかないんだよね」
紫はワインを一口飲んだ。