【完】『けったいなひとびと』
「そういう伊福部くんは結婚しないの?」
「俺はなー、結婚たぶん向いてへんかなって何となく自覚しとる」
「自覚?」
「柏木なんかはよう知っとるけど、俺がかなりワガママやからなぁ」
駿はお好み焼きの残りの一口を頬張ってから、
「彼女は出来るけど嫁さんってのはなぁ」
「お前は無理やろ結婚」
柏木が突っ込む。
「いっぺん失敗してバツついたやつが言うな」
養育費でヤイヤイ言われるのがオチやろ、と駿はカリモーチョを飲み干し、
「人間どっかで妥協せな、世間並みな幸せは掴めへんってことやな」
「そうなのかなぁ」
「俺は取り敢えず三年で室長は明け渡して、また京都に戻るつもりやしな」
「何で?」
「まず東京が俺には向いてへん」
「それは言える」
という柏木の突っ込みには、
「ばれたか」
駿は苦笑いをするより他なかった。