【完】『けったいなひとびと』
店を出ると紫と駿は駅まで歩きながら、
「あのね、伊福部くん」
「なんや」
「私さ…、今の彼がホントに好きなのかどうか、自分じゃ分からなくて」
「うーん…無理に結論出さんでもえぇんちゃう?」
「…えっ?」
「世の中、百鼠(ひゃくねず)ってぐらい白と黒の間は色んなグレーがある。せやから急いで何色か決める必要はないんとちゃうかなぁ」
「…伊福部くんらしいな」
はじめて紫は笑顔になった。
「ありがと。やっぱり伊福部くんに話して良かった」
駅の看板が見えてきた。
「取り敢えずありがとね」
「おぅ」
「また明日ね」
紫が改札をくぐって人混みに消えて行く。
「結婚、かぁ」
きびすを返すと、駿は地下街の階段を降りて行った。