【完】『けったいなひとびと』
株主
朝。
駿の通勤は車で、しかもケータハムセブンという、小さめのクラシックカーのような可愛らしい黄色の自動車を使う。
営業時代から乗っており、
「あ、今日は伊福部くん内勤なんやね」
と、この車の有無で所在がわかるほどのトレードマークになっていた。
駿は気に入った車やペン、鞄などは手入れをしながら長く使う性分で、ケータハムセブンにいたっては十年近く乗っている。
これで川崎のアパートから通勤するのだが、ビルの地下の駐車場に来ると、
「みんな高いのばっかりやからなぁ」
と、周りがベンツやらポルシェやらフェラーリやらで、ケータハムセブンなどという黄色の京都ナンバーが、かえって悪目立ちするぐらいであった。
しかし。
ビルのOLたちの間では、
「あの黄色のルパンの車みたいの可愛い」
と、ルパン三世の漫画にでも出てきそうなデザインだけに、人気は高かった。