【完】『けったいなひとびと』

わずかずつながらこうした努力もあって、リーマンショックの頃には赤字であった純益も、ようやく黒字の利益が出るようになり、

「これで株主に配当を回せます」

と会計の担当者が胸をなでおろしたほどであった。

この直後の株主総会では、約七年ぶりに株主配当がわずかだが出せるようになったので、

「やっと落ち着いたか」

と株主たちには、久しぶりに安堵が広がった。

しかし。

この株主総会を違う眼で見ていた株主がある。

「あの女社長、なかなかのタマだな」

と凝視していた。

筆頭株主である創業家の、あの本間新吾である。

ちなみに。

本間家の株式の保有の比率は約三割で、次がさやかを派遣したニューヨークの投資ファンドで二割五分である。

筆頭株主は正確には新吾の父の新之助で、

「久々に傑物が出た」

と本間家では話題になったほどの人望家でもあった。

実際。

社史の編纂や、歴代の本間家の当主が集めた骨董品で美術館を作らせたりしており、

「文化事業では成功した」

という評価をされている。



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