【完】『けったいなひとびと』
このため。
さやかも本間新之助を顧問として待遇しており、駿も創業家の扱いだけはかなり配慮をするよう時間も割いている。
株主総会が無事に終了してほどなく、さやかは成城の本間家に呼ばれた。
無論、駿が同行している。
戦前にアールデコ様式で建てられた洋館で、このときばかりは駿もリュックではなく、ジュラルミンのケースを手にした。
応接室に通されると、
「まぁかけなさい」
とさやかに椅子を促した。
駿は下がって席を外そうとしたが、
「君は秘書室長だろう、かけなさい」
とさやかの隣に座らされた。
「実はね秀島くん」
と本間新之助は、実に意外な言葉を口にした。
「花輪屋はもう今や本間家だけの花輪屋ではない。だから今度、うちの株式を売却しようかと思う」
驚くべき発言である。
「おそれながら、それは重大事項です」
ことの重大性に早く気づいた駿は言った。
「うん、こうして早く気づいた部下がいるなら、なおさら大丈夫だ」
本間新之助は微笑んだ。