【完】『けったいなひとびと』
ところで──と本間新之助は、
「秘書室長の伊福部くん、と言ったね」
「はい」
「君はうちの新吾についてどう思う?」
「…いや、自分はお会いしたことはございませんので、何とも」
「では、評判は?」
駿は黙った。
「…何か、多分よからぬことだろうけど、あるんだね」
そこまで察せられては、答えざるを得ない。
「実はこれは自分の同期が、新吾さんとお会いしたときの話なのですが」
と前置きをしたうえで、例の紫の件を一部始終、包み隠さず話した。
「そんなことがあったのか」
酒に酔って広報の社員の業務を妨害し、警備員に捕まったというのは、本間新之助にすれば衝撃的であったらしい。
「なるほど…分かった」
すると即座に部下らしき人物を呼び、メモ用紙にさらさらと何事かを書いて渡した。
部下らしき人物はすぐ応接室を出たが、
「今しがた、株式の売却を指示した」
これにはさやかと駿の方が仰天し、
「それは」
と言ったきり言葉につまった。