【完】『けったいなひとびと』
「伊福部くん、ありがとう」
と急に本間新之助は駿の手を固く握った。
「この前から株式の売却は悩んでたんだが、踏ん切りがつかなくてね」
「はい…」
「しかし、新吾のような者に財産を持たすと、本間家がどうなるか分からない」
これは契機だと思う、と言うのである。
「しかし、売却を即決とはまた…」
さやかが小さくもらした。
「昔から、思い立ったが吉日というだろう」
「確かにそれはあります」
「だからそれが、花輪屋のためにも、本間家のためにもいいんだよ」
何事かをやりきったような清々しい顔つきで、
「伊福部くん、くれぐれも花輪屋と秀島くんを頼むよ」
「はい!」
このときばかりは駿も顔が紅潮し、後から何だか青臭くて恥ずかしかったらしかった。