【完】『けったいなひとびと』

駿は広報部に対し、

「三浦なら英語も出来るし、テレビ取材の対応もやってるぐらいで、場数も踏んどるやろ」

と主張したが、

「今回は実は投資ファンドからは、別の社員に指名が来てまして」

との由で、結局これが覆ることはなく、最終的には舞と晴加を担当にして会議や稟議を進めたのだが、

「大きな車は回りが遅いなぁ」

と、暗に老舗ならではの機能不全が働いたことを駿は嘆いた。

視察の日。

駿はさやかの代理として、信濃町の大学病院にいた本間新之助を見舞った。

肺炎が芳しくなかったらしい。

「ご気分はいかがですか?」

創業家の当主として、また顧問として長く花輪屋を支えてきた人物だけに、視察団が来るのが気がかりであったようで、

「アメリカから視察団が来たようだが」

「それは秀島社長がきちんと対応しておりますので、どうかご安心ください」

それが駿に言える精一杯の気配りであった。

「それと、新吾が何か言ってくるかも知れないから、相手にしないように」

「承知しました」

それを覚書にしていただけると助かります、と駿は頼んだ。



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