【完】『けったいなひとびと』
「それで、私が社長に就任して初めて幹部会議に出たとき、秘書室長が解任になったばかりで候補を探してたら、京都支社の支社長から伊福部くんの名前が出たわけね」
それは駿も初耳の話であった。
「で、支社長いわく、伊福部は商人の息子で営業もしてて人のあしらい方や付き合い方を分かってるから、あれならセクハラはしないんじゃないかって」
そういうことだったのか、というような顔を駿はしたが、
「それで試しに室長にさせてみたら思ったより仕事はキッチリしてるし、何より誰より細かく気づくし、頼まれたことは律儀にこなすしで、ほんと助かるわけ」
今後もよろしく頼むね、と言うとさやかはグラスを持ったので、
「では乾杯」
とそれぞれ一口飲んだ。
その帰途…。
タクシーに乗り込むと、
「伊福部くんは、どういう女性がタイプ?」
と訊いてきた。
「強いて言えば、個性的な女の子ですかねぇ」
「個性的?」
「例えば、まぁ元カノがそうやったんですけど、コスプレが好きとか、アニメが好きとか、そういったちょっとオタクっぽいところがある女の子が好きみたいでして」
さやかにすれば意外な返事である。