【完】『けったいなひとびと』
「じゃあ普通のOLさんとかは?」
「ほんなら逆に訊きまっけど普通って、何が基準なんでしょうかね?」
これにはさやかも言葉に詰まった。
「コスプレする女の子からすれば、彼女たちのコスプレはフォーエバー21やユニクロにあるガウチョやサロペットと同じレベルで、それが派手か地味かってだけのことなんですよね」
「そっかぁ」
さやかは目から鱗が落ちたような気がした。
「むしろ、ああいう好きな服を着たり、好きなことを大事にしてる女の子の方が、俺は人間味があって好感持ちますけどねぇ」
「人間味?」
「だいいち何でも出来ちゃう女の人って、男にすれば隙がなさすぎて、どうしたもんだか」
駿らしい言い方だが、それは、
「人間は不完全だから面白い」
ということを暗に示しているかのようでもある。
駿のアパートの近所まで来て、駿は降りた。
さやかは何か納得したような、それでいてさわやかな敗北感もおぼえたのか、
「じゃあ私は伊福部くんの彼女にはなれないかもね」
去り際にそう言うと、さやかを乗せたタクシーは角を曲がって消えた。