【完】『けったいなひとびと』
その頃、広報部には報道で知ったユーザーや取引先からの問い合わせや抗議で、電話が鳴りっぱなしであった。
「…はい、大変申し訳ございません」
三浦紫も、電話の応対に追われている。
会議室に幹部会議が召集され、営業や開発、会計を初めとするさまざまな部署の部長クラスの管理職が集められた。
駿は、さやかの後ろで秘書室長として会議の席についている。
「今回のクレームについてですが、肌に白斑があらわれるとのことで、原因の成分が何であるか特定を急がせてます」
製品管理部門からの説明が終わると、
「商品の回収には約二週間から一ヶ月かかるかと」
という営業部門から報告があって、
「これは損益を覚悟しないと無理でしょうなぁ」
と会計からは嘆息が出る。
さやかの判断は、
「まずはお客さまに誠心誠意で謝罪をし、お詫びの広告を出しましょう」
というものであった。
「しかしそれは原因の絞り込みが済んでからでも遅くないのではないかと」
「実際に被害者が出た以上後回しにはできない」
さまざまな声が上がるなか、
「社長、ご決断を」
全員がさやかに注視した。
「まずはお客さまへの謝罪とお詫びを最優先にします」
さやかは決然と言い放った。