【完】『けったいなひとびと』
方針が決まると動きは早い。
謝罪広告の内容や文言、お詫びの社員の派遣などが、矢継ぎ早に決まって行く。
この対処は過去の花輪屋であれば考えられなかったであろう状況で、
「いちいち稟議に時間がかかっては被害が増える」
というさやかの強い権限で、ときには稟議書もなしで動くこともあった。
そうしたなか。
駿は謝罪会見のセッティングをすることとなったのだが、
「はて、どうしたものか」
と早くも詰まってしまった。
そこで。
柏木に横浜の球団を紹介してもらい、さらに球団から都内のホテルの広間を借りる段取りをつけることは出来た。
セッティングはホテルに任せ、あとは資料を手にさやかを会見場に移動させなければならない。
が。
タクシーがなかなかつかまらない。
「…しゃあない」
と駿は資料をリュックに詰め、さやかの手を引くと、
「ちょっと強行突破しまっせ」
とだけいい、地下の駐車場に降りた。