【完】『けったいなひとびと』
会見場に着くと、
「社長には控え室として部屋を準備してもろてます」
と言い、駿は駐車場に車を置きに行った。
さやかはホテルスタッフの案内で部屋に通されると、
「会見、苦手なんだよ…」
初めて吐いた弱音らしい弱音でもあった。
しばらくして駿が来た。
「テレビカメラのセッティングの関係で、会見まで時間がありますから、少し資料を読み込んどきましょう」
と手渡した。
しかし。
「あのね伊福部くん」
いつもの「伊福部室長」という呼び方でなかったところから、かなり緊張していたのかも分からない。
「会見だけど…冒頭の説明だけでいいから、同席してもらえないかな?」
「いや、それは」
そういうのは通常なら顧問弁護士の仕事で、秘書室長の仕事ではない。
「会見って私…実は苦手なの」
「そんなん言うたら俺かてアガリ症でっせ」
「…お願い!」
上目遣いでさやかが懇願する。
「分かりました…じゃあ、ちょっとスタンドマイクだけ用意してもらいます」
駿はスタッフを呼んだ。