【完】『けったいなひとびと』

信濃町の大学病院にたどり着くと、

「伊福部さん、実は今しがた」

他界したことを知った。

取り敢えず本社には連絡を入れ、駿は病室で無言の対面をし、

「ところで急な話ですが、葬儀は密葬ですか?」

と周辺に確認を取ると密葬との遺志であったらしく、

「後日お別れ会を開く方向で、スケジュールの調整をお願いしようかと」

との意向で、駿は打ち合わせを終えると帰ろうとした。

そのとき、である。

「伊福部室長」

呼び止めたのは本間家に長く使えていた執事で、

「例の覚書ですが、こちらに」

と封筒ごと渡された。

「もしかしたら新吾さんが何かしてくるかも知れないんで、気をつけてください」

「ご親切にありがとうございます」

深々と礼をして駿は本社に戻った。



< 50 / 128 >

この作品をシェア

pagetop