【完】『けったいなひとびと』
信濃町の大学病院にたどり着くと、
「伊福部さん、実は今しがた」
他界したことを知った。
取り敢えず本社には連絡を入れ、駿は病室で無言の対面をし、
「ところで急な話ですが、葬儀は密葬ですか?」
と周辺に確認を取ると密葬との遺志であったらしく、
「後日お別れ会を開く方向で、スケジュールの調整をお願いしようかと」
との意向で、駿は打ち合わせを終えると帰ろうとした。
そのとき、である。
「伊福部室長」
呼び止めたのは本間家に長く使えていた執事で、
「例の覚書ですが、こちらに」
と封筒ごと渡された。
「もしかしたら新吾さんが何かしてくるかも知れないんで、気をつけてください」
「ご親切にありがとうございます」
深々と礼をして駿は本社に戻った。