【完】『けったいなひとびと』

その夜。

「一応擬似でも彼氏だから、それらしくしないとね」

というさやかの案で、柏木のお好み焼き屋へ駿と二人で入った。

「…あ」

引き戸を開けたさやかの目に飛び込んできたのは、舞とさとみの姿である。

「社長もこの店知ってたんですか?」

「まぁねー。今回はちょっと無理を言って、伊福部室長に連れてきてもらった」

さやかはこういうときになると、脳に瞬発力があるらしく瞬時に言葉を選んで話す。

「ここの美味しいから、一緒に食べましょうよー」

さとみが席を詰めた。

「ありがと」

小上がりに上がると、駿はさとみの隣に座る格好となった。

「二人ともここは知ってたの?」

「前に室長に打ち上げで連れてきてもらったんですけど、ねぎ焼きが超美味しかったんで」

あれからたまに寄っているらしい。

「上司と部下が仲がいいってのはえぇことですね」

柏木が付き出しのおひたしを出した。



< 54 / 128 >

この作品をシェア

pagetop