【完】『けったいなひとびと』
その夜。
「一応擬似でも彼氏だから、それらしくしないとね」
というさやかの案で、柏木のお好み焼き屋へ駿と二人で入った。
「…あ」
引き戸を開けたさやかの目に飛び込んできたのは、舞とさとみの姿である。
「社長もこの店知ってたんですか?」
「まぁねー。今回はちょっと無理を言って、伊福部室長に連れてきてもらった」
さやかはこういうときになると、脳に瞬発力があるらしく瞬時に言葉を選んで話す。
「ここの美味しいから、一緒に食べましょうよー」
さとみが席を詰めた。
「ありがと」
小上がりに上がると、駿はさとみの隣に座る格好となった。
「二人ともここは知ってたの?」
「前に室長に打ち上げで連れてきてもらったんですけど、ねぎ焼きが超美味しかったんで」
あれからたまに寄っているらしい。
「上司と部下が仲がいいってのはえぇことですね」
柏木が付き出しのおひたしを出した。