【完】『けったいなひとびと』
「で、私が初めてノルマを達成出来なかったときに、花輪屋への派遣が決まったのね」
「そうだったんだ…」
初めての挫折であったらしい。
「最初はそんな古臭い会社なんか嫌だって言ったんだけど、でも伊福部室長とかさとみちゃんとかと一緒に仕事してると、みんなイキイキしててね」
こういう職場で頑張るのも悪くないなって…さやかはねぎ焼きの一切れをつまんだ。
「で、今はこう思うの。いつかこの会社を、アッパーフロアの人に一目置かせてみせるって」
「秀島社長…」
感極まったのか、涙もろいさとみはポロポロ涙をこぼしていた。
「伊福部くんがよく『祇園に行けばアッパーフロアの連中は一見さんや』って言ってて、ああやって高いプライドを持って仕事をしてたのが印象的で」
「あー…」
駿は間延びした牛のような声を出した。
「あれを聞いたとき、何かスイッチが入った感じがした」
だからみんな団結して明日も頑張ろ…というと、さやかの音頭で乾杯をしたのであった。