【完】『けったいなひとびと』

しかし。

なぜか駿が書類を手にマイクの前に立った。

「本日、当社代表取締役の秀島さやかがインフルエンザにより療養中のため、メッセージを代読いたします」

事実。

さやかは何日か前からインフルエンザであった。

熱は下がっていたが、法定伝染病であるため、医師が定めた期間内は不特定多数への接触が、法律で禁止されている。

「偶然とはいえ、これを使わん手はない」

駿はそれを利用したのである。

「本日はインフルエンザのため出席できず、まことに申し訳ありません」

という冒頭から始まり、本間顧問にはずいぶん尽力をしていただいたとの旨が読み上げられ、

「これからもどうか見守っていただければと存じます」

という文言で締め括られていた。

代読が終わると、

「…よし」

駿はさやかの控室へと急いだ。



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