【完】『けったいなひとびと』

控室にはさやかがいた。

「…無事、代読まで終わりました」

そこで駿が取った作戦は、さやかにマスクをしてもらい、あえて車椅子で移動してもらうという策であった。

「これならおのずとケアが要るから二人きりにはならない」

という算段である。

まず、控室から駿が押して車椅子ごとさやかが出た。

それでロビーを抜けて車椅子用のタクシーに乗せる。

これが計画であった。

が。

ロビーから車寄せまであと数メートルという位置で、

「おい」

明らかに本間新吾の声である。

「これは本間様、お手洗いはあちらにございますが」

「…とぼけるな!」

「さて…なんのことやら。ご覧の通り車椅子のご来賓をご案内しておりますので、これで失礼いたします」

「…待て」

と車椅子の前に立ちはだかった。



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