【完】『けったいなひとびと』
晴加が護のポルシェで同伴通勤する姿は何度か見られていたらしく、
「そんなことがあるんか」
と上司である駿が噂を耳にする頃には、社内じゅうのちょっとした話題の一つへと発展していた。
が。
隣の机にいながら、駿は晴加の話題は一切ふれなかった。
それどころか。
悪し様に喋る事務の社員を見つけると、
「そういう根も葉もない話に振り回されたらあかんで」
と、たしなめるほどであった。
さやかが噂を聞いたのは、さらにあとになってからのことで、
「護も気が変わったんだな」
というぐらいにしか感じてなかったらしい。