【完】『けったいなひとびと』
だがしかし。
こうした一連の行動は、東京本社の中ではあらぬ疑惑を呼んでいたようで、
「堤晴加は産業スパイの可能性がある」
という風評が出ている。
駿にすれば、
「上司が部下を疑うようになったら組織は終わり」
という基本的な方針を堅持しており、したがって晴加に対しても何も厳しいことは言わなかった。
「堤くんは秘書やのに口が立たんからなぁ」
と、晴加が生来の口下手であることも、駿は加味してある。
そうしたなか。
一本の電話がかかってきた。
「…はい」
電話を受けたさとみが少しいぶかしげな顔つきになって、
「少々お待ちください」
と受話器をやおら手で塞いでから、
「室長、警視庁からです」
「…警視庁?」
思い当たる節がないだけに駿も首をかしげたが、取り敢えず代わりに出た。