【完】『けったいなひとびと』
それで、と加藤巡査部長は、
「この件に関して、あなたの部下を疑うようで申し訳ないんですが、そちらから相談したという記録を提出していただきたいんです」
「それは…なぜ?」
「われわれ警察では、一般の方々からの相談や被害届がなければ捜査が出来ない場合がありまして、今回の案件はそれに該当します」
「なるほど」
「なので、相談したという形で提出をご協力いただけると、われわれとしては捜査が出来ます」
駿は目を伏せた。
「もちろん無理にとは言いません。しかし、本間新吾の携帯電話の通話履歴から、本間新吾が秀島さやか社長に、執拗なストーキング行為をしていた事実もありまして、これはそちらから相談がないと、捜査対象にならないんです」
しばし駿は沈思した。
「…分かりました。ただしこれは」
と駿は、
「花輪屋の法人からとしてではなく、社員の伊福部駿の一存で相談をしたということでよろしいでしょうか?」
「…了解しました」
ではこちらの書類に署名をお願いします…と、駿は自らの名前を署名した上で、
「名刺をお渡ししておきます」
と名刺も出した。