【完】『けったいなひとびと』

数日後。

駿の姿は京都にあった。

「自宅待機」

という辞令どおり、自宅のある京都へ、ケータハムセブンと共に戻っていたからである。

あえて川崎のアパートは、引き払った。

また東上する機があったら、そのとき考えればいい…という判断もあったのかも分からない。

西陣の酒屋に帰ると、

「ようやく嗣ぐ気が起きたか」

などと父親は歓迎したが、

「あれはいわゆる官打ちに遭ったんやね」

と母親は呟いた。

官打ち。

身分不相応な高い地位に上げられてから、梯子を外されてしまうということである。

「官打ちなんかお公卿さんの話や思ってたがな」

駿は笑ったが、ともあれブラブラしているのも体裁が悪い。

そこで。

京都支社に伺いを立てて許可をもらってから、駿は学生時代のように配達の手伝いを始めた。



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