【完】『けったいなひとびと』
騒動
夕方。
東京本社のエントランスに、祇園の女将たちが大人数あらわれた。
総勢で五十人はあろう。
あでやかな着物姿にみな髷を結い、かぐわしい鬢つけ油の香りを漂わせ、木履や下駄の音を響かせて行列を仕立てたその姿は、
「なんだか大奥みたいだな」
と口々に評が立った。
花輪屋のフロアにあらわれると、
「弁護士の竹内さん、呼んどくれやす」
とねじ込んだ。
「アポイントメントは…」
「つべこべ言わんと、早ようお取り次ぎやっしゃ!」
梅野屋の女将がピシャリと叱る。
その気迫にフロアはざわつき、受付はあわただしく走り回る。