【完】『けったいなひとびと』
室長
社長室はフロアの最も奥の突き当たり、廊下の先にある。
取り敢えず給湯室の鏡で曲がったネクタイだけは直し、ノックをした。
「はい」
奥から声がする。
「失礼いたします」
やっぱりアクセントは京都弁である。
「お呼びでございますか」
ドアの側に駿はたたずんだ。
「こちらへ」
後ろ向きに座って机で資料を目に通している。
「で、ご用向きとは」
振り向いた。
「…一週間後のパーティーなんだけど、これは出なきゃダメなの?」
指を差したのは、とある国会議員の政治資金パーティーの部分である。
「国会議員のパーティーにはさまざまな財界の方々がご出席されますので、できればご挨拶かたがたお出になられたほうがよろしいかと」
「でもこの方は大臣ではないよね? これは無駄では?」
「しかし当社の創業の地である山形がこの先生の選挙区でもありまして、過去にですが先生に献金もしております」
社長の秀島さやかはメガネを外した。