【完】『けったいなひとびと』
そのとき、である。
「…もし」
通りかかった三浦紫に声をかけた。
「社長さん、いてはりますか?」
「はい」
ご案内いたします、と紫が廊下を進んだ。
社長室を開けた。
目の前には護がいる。
「…なんだね君たちは」
「うちらは祇園の花輪屋のユーザーどす」
「なんだ田舎の客か」
これが怒りに火をつけた。
「そないに客を粗末に言うような人は、商売失格どす。とっとと花輪屋から往(い)んどくれやす」
梅野屋の女将の口振りはやんわりだが、強い口調に護は完全に呑まれている。
「君たちは株主じゃないだろう。それに部外者だろ」
「それがどないしたんや。あんたも部外者でっしゃろ。早よう花輪屋から往ねや!」
女将たちからつぎつぎに怒号が飛ぶ。
「…なんだね君たちは」
あまりの剣幕に警備員すら近づけない。
「あんたな…祇園を敵に回したらどないなるか、よう覚えとき」
梅野屋の女将の顔は氷並みに冷ややかで、それがかえって恐怖心を護に強烈に植え付けていたようである。
護はなすすべなくその場を立ち去った。