【完】『けったいなひとびと』
この一件はたちまちSNSで話題にあがり、連日すべての朝や昼の情報番組で、大々的に取り上げられるようになった。
「祇園の美女軍団、化粧品メーカーの乗っ取りを企む悪徳弁護士と対決!」
などという見出しが毎日テレビや雑誌を賑わせ、相手に祇園の芸妓や舞妓も加わっていたことから、
「画面が賑やかだから、とにかく祇園側を撮れ」
とディレクターが指示したらしく、特に視聴率が欲しくてたまらなかったテレビ局が、執拗なぐらいに敵役の護をしつこくバイクやヘリで追い回した。
これには護もたまらず、
「…帰るぞ」
と、ひそかにシカゴへ脱出したのだが、さらに執拗に週刊誌に追い回され、ついには失踪したのであった。
このとき。
さやかはすでに社長を辞任している。
「別に執着はない」
と言い、本間家の宗家から後継者を選んでスッパリと辞めている。
さやかは特に、社長の椅子にこだわってはいなかったらしい。
ちなみに。
梅野屋の女将は祇園に戻ると、
「まるで小五郎さんを匿う幾松さんにでもなったような気分やった」
と、さながら幕末の女傑にでもなったような心持ちであったことを、しばらく座敷での笑い話にしたほどであった。