【完】『けったいなひとびと』

しかし。

組織が混乱の最中にあるときに限って、そうした突拍子もない案は通るもので、

「取り敢えず覚書、開いてみます?」

という駿の思い付きめいた発案で、例の覚書は裁判所に持ち込まれて、封が切られた。

中身には、

「今後は秀島さやか社長に花輪屋を託す」

と書かれてある。

「直筆の署名と捺印があるので公的文書としては有効です」

との、裁判所からの決定が出たのは半月後である。

これが契機となって。

秀島さやかの社長復帰が役員会議にかけられ、満場一致で復帰が承認されたのであった。

これを聞いた駿は、

「これで俺の役目は終わりやろ」

と言い、ひとまず京都へ戻った。



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