【完】『けったいなひとびと』
◇4◇

復帰


辞任して以後、親の出身地であった長崎でひっそりと過ごしていた秀島さやかは、復帰が決まってほどなく東京へ帰ってきた。

「さ、気持ちも新たに再生スタートだよ!」

と言い、刷新された新体制で始まったものの、どこか活力がないのである。

秘書室も、新しい室長は大ベテランの女性秘書を入れたのだが、迅速な対応にはついて行けていない。

さとみもこの時期になるとだいぶ仕事の処理が早くなって、

「私がいつか晴加先輩みたいなポジションになるのかなぁ」

と言いながらも、舞と二人で毎日のスケジュールの調整をこなしていた。

やっと混乱が落ち着いてきた頃、

「伊福部くんを呼び戻したいんだけど…」

とさやかは言った。

だが。

「あの…伊福部さん、退職されましたけど」

舞から駿の退職を知ると、

「…何で誰も引き留めなかったの!」

と珍しく激昂した。

「京都支社長が留めたみたいなんですけど、酒屋を嗣ぐ代わりはいないからって」

「…彼、跡取りだもんね」

さやかはさみしそうに肩を落とした。



< 97 / 128 >

この作品をシェア

pagetop