【完】『けったいなひとびと』
◇4◇
復帰
辞任して以後、親の出身地であった長崎でひっそりと過ごしていた秀島さやかは、復帰が決まってほどなく東京へ帰ってきた。
「さ、気持ちも新たに再生スタートだよ!」
と言い、刷新された新体制で始まったものの、どこか活力がないのである。
秘書室も、新しい室長は大ベテランの女性秘書を入れたのだが、迅速な対応にはついて行けていない。
さとみもこの時期になるとだいぶ仕事の処理が早くなって、
「私がいつか晴加先輩みたいなポジションになるのかなぁ」
と言いながらも、舞と二人で毎日のスケジュールの調整をこなしていた。
やっと混乱が落ち着いてきた頃、
「伊福部くんを呼び戻したいんだけど…」
とさやかは言った。
だが。
「あの…伊福部さん、退職されましたけど」
舞から駿の退職を知ると、
「…何で誰も引き留めなかったの!」
と珍しく激昂した。
「京都支社長が留めたみたいなんですけど、酒屋を嗣ぐ代わりはいないからって」
「…彼、跡取りだもんね」
さやかはさみしそうに肩を落とした。