嘘つき赤ずきん 思春期オオカミ




───その頃。


真っ白な廊下を、少女4人はひたすらに走っていた。


先頭を涼しい顔で走るのは、運動神経抜群の、瑠香である。


その後ろを、香絵良、由帆が続く。


言い出しっぺの鈴は、体力に自身がなくヘトヘトだ。



「はあっ……はあ、ねえー、瑠香なんでそんな速いの……」


「体力には自信アリ」



そう言って、瑠香はgooサインをした。


そんな瑠香の姿に、鈴は泣きそうになるが、なんとかこらえる。


そんな4人の中、状況を読めていない者が1人。


楽しそうに、鼻歌を歌いながら、天然、いやアホ代表。


由帆が、口元を緩ませながら言った。



「わーいっ♪♪ 鬼ごっこだあ!」


「由帆!?何言ってんの!?」



呆れながらも、香絵良はツッコんだ。


由帆は、「えー??」と唇を尖らせた。


そんな状況でも、冷静な瑠香は「次右曲がるよ」と3人に指示を出した。


由帆は、相変わらず鬼ごっこだと勘違いしてるようで。



「鬼って、誰~?」


「だから、鬼ごっこじゃないって!!」



香絵良が丁寧にボケをさばくと、今度は鈴が叫びをあげた。



「もう、疲れたー!!ねえ、お腹すいたあー!!」


「じゃあ、もう休めばぁ!?」



ついに、堪忍袋の緒が切れた香絵良はものすごい眼力で叫んだ。


ワ──!!ギャー!


と、彼女達は盛り上がり(?)ながら走っていく。


そんな、4人を遠くから見つめる少年達。



「何やってんだ……?あいつら……」



真央が、呆れたように頭を抱えると凌音が面白そうに目を細めた。



「へえ……初狩りで、あんなに騒ぐ子達いるんだあ……」


「初狩りかよ、くだらねえ」



凌音とは若干温度差が感じる発言をして、蓮水はつまらなそうに欠伸をした。


怜乃は、オロオロしながら誰もいなくなった教室を見据えた。



「皆……授業どうするの……?」


「オレたちジーニアス科は、免除されてるじゃんか♪

というか、そもそもオレら生徒会に、逆らう生徒もいないじゃん


────もちろん、教師も」



不敵な笑みを見せる凌音に、
怜乃は「でも……」と言葉をつまらす。


だが、蓮水が欠伸をしながらこの場を去ろうとしたので怜乃は彼の背中に問う。



「どこ行くの?」


「図書室。あそこ、ゆっくり寝れるからよー」



ふぁーと、再び欠伸をして蓮水は空中で手を降った。


仮にも、彼は日本でも名を知れた名家の子息なのだが、彼は自覚がないようだ。


蓮水に何を話しても無駄、ととらえた3人。



「……どうする?」


「オレは、何か面白いこと探してくる♪」


「……はあー」



凌音が、立ち去り怜乃と真央だけが残った。


真央は、ため息をついて歩き出す。


怜乃は何も聞かず、ただその背中を見つめていた。


真央の頭には、あの無邪気でドンくさい幼なじみが浮かんでいた。



(あいつ、何かやらかすからな……)



鈴を、と言うよりは、あの男子生徒を心配する真央。


理由は分からないが、真央は何となくそんな予感がした。


真央がいなくなり静まり返った教室に、1人取り残された怜乃は生徒会室に用がある事を思い出す。



「……嫌な予感がする」



何故かは分からないが、怜乃はこれから起こりそうな悪い予感に身を震わせた。


そして、足早に生徒会室の方向へ歩き出すと



(どうか、何事もありませんように!!)



と、強く心に願ったのだった。




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