嘘つき赤ずきん 思春期オオカミ
「───は?お前ら転校すんの?」
手にしていた携帯を、落としそうになりながら俺、葉山真央(ハヤママオ)は4人を見た。
俺の言葉に答えたのは、無邪気な声。
「そうだよー、お邪魔してます♪」
小柄で可愛らしい少女、桜乃鈴(サクラノレイ)だった。
幼なじみのコイツは、よく俺の部屋にいることが多い。
だから、コイツがいることは分かる。
───だけど。
「いやあー、やっぱ葉山の家は広いねえ」
ソファーに盛大に寝転がりながら、くつろぐ柳田瑠香(ヤナギダルカ)。
正直、何故ここまで人の家でくつろぐかは分からない。
「──何で、“お前ら”がいんだよ!?」
近所迷惑だとは、思うが俺は盛大にシャウトした。
今日は言わせてもらおう。
鈴は、分かるがなぜ、お前らがいるのだと。
「幼なじみのコイツ(鈴)がいるのは分かるけど、何で違うお前らが────」
「よっ!金持ち!!」
「人の話を聞こうね!?」
俺の言葉を遮るのは、またまた鈴の友達の、高月香絵良(タカツキカエラ)。
すごい、キラキラネームだな、おい。
それから、俺の隣で爆笑する女がもう一人。
日下部由帆(クサカベユイホ)。
女4人に囲まれた俺は、とても居心地が悪い。
自分の家なのに……
「で、どこに転校すんだよ?」
もう反論する気は失せて、本題の話に入る。
俺の問に答えたのは、鈴だった。
「ん?とね、確か、獅子王学園だったかなあ……」
「獅子王?それって、俺たちとおなじとこじゃん」
「そうそう!」
そうそう、じゃないよ。
俺は、ため息をついた。
「……オススメはしないぞ?」
「?なぜ?」
「…………いや、男子校だったんだよ前まで」
「まじ!?逆ハーじゃん///」
能天気に喜ぶ、由帆。
うん、馬鹿だなこいつ。
逆ハー?
そんな甘いところじゃない。
「そもそも、なんでこの時期に転校?」
「私達の学校って、超人数少ないわけ。だから、今年の1年生も入ってくるの少ないらしくて、もう、廃校?みたいな☆」
「いや、何その軽〜く廃校、みたいな感じ!!」
俺がツッコむと、香絵良が舌を出した。
まさしく、テヘペロを催したその表情にイラッときたが瑠香が言葉を繋げた。
「……というわけで、1番近い学校」
「獅子王学園に、したわけ。最近共学になって女子にも困ってるらしいしね♪♪」
鈴がピースサインをして、俺に微笑む。
いや、そんな無邪気な笑顔されても。
駄目だ、こいつら。
全然分かってない。
「駄目だ、やっぱ危険すぎる。」
「え〜?だってもう手続き済まして、明日からだよ?」
その言葉に、目が点になる。
今、こいつ、なんて言った?
鈴の言葉に香絵良が同調した。
「そうそう。もう制服買ったしねー」
「赤いケープついてて、可愛いやつ!!」
由帆が両手を組んで、嬉しそうにひたる。
そんな由帆の言葉にある、記憶が蘇る。
一週間前、鈴から送られてきたあの写真。
「はあ……だから、お前うちの制服着てたの?」
「うん、可愛いからさ真央に見せようかなって♪」
「…………のぞいたの?葉山」
瑠香が、引いたような目で俺を見る。
「んなわけねえだろ!!///コイツが写メで送ってきたんだよ!!//」
「あっやし〜」
「怪しくねえわ!!///」
息を乱しながら、瑠香を睨みつけると鈴が無邪気に言った。
「まあ、明日からよろしくね、真央♪♪」
「…………はあー」
明日は、疲れそうだな。
そう思って、再び深いため息をついた。