嘘つき赤ずきん 思春期オオカミ
────雲一つない、晴天。
清々しい朝の幕開けにもかかわらず、真央は気分を落としていた。
その最大原因。
それは、彼の周りを囲う無邪気なお姫様達のせいだ。
「へえ〜男子はケープ着ないんだあー。」
「…………はい、そうですね」
「あ、ピアスつけてもいいの?葉山。」
「はあー、この制服フリフリすぎ。」
「香絵良がボーイッシュすぎるだけだよ、由帆はすきだよー♪♪」
湿るように暗い真央の雰囲気に似つかわしくない、お花が飛び交う可愛らしい雰囲気。
真央は、たまらずため息をついた。
(なに、この状況!?)
気分はブルー。
そんな真央の隣で、無邪気な幼なじみの声。
「あっ、真央!ついたよー」
「マジ?」
肩をたたかれ、見上げれば見慣れた校舎。
本当に、こいつらが登校してきてしまった……と改めて思い知らされた。
真央は、道行く男子の視線を感じて肩を落とす。
そりゃそうだ。
登校してきて、女4人連れてるんだからな。
真央は、4人の姿を確認した。
しかも、その4人が美少女ときたら真央の立場がどんどん小さくなる。
「ていうか、お前らあんま俺に近づくなよな。“初狩り”4人の女どもを連れてるって知られたら、色々マズイし」
「……?狩り?」
「まあ、この学校見たらすぐ分かる」
小首を傾げる鈴を見て、真央はまたため息をついた。
もう、何度目になろうか。
鈴は、気にもとめず再び歩き出す。
そこで。
───ポト
鈴のポケットから、ハンカチが落ちた。
「ハンカチ、落としましたよ」
「──?あ、ありがとうございます」
「いいえ」
にっこりと笑う少年に、鈴は頬を染める。
端正な顔立ちをした少年だったのだ。
「今の、めっちゃイケメンじゃん!鈴うらやまー」
「でたよ、香絵良のイケメン好き……ていうか、何気に男子生徒ほぼイケメンじゃん」
「ホントだあ、ラッキー♪♪」
そんな、無邪気な4人を真央は黙って見つめていた。
(まあ、ラッキーで済めばいいけど)
「真央?どうしたの?」
「別に」
───そんな、彼女達遠くから見つめる小柄な少年が一人。
さらさらな赤髪をなびかせて、一言呟いた。
「────見つけた」
少年は、安堵のような表情を浮かべた。
そして、彼女達の方へ歩み出した。