全てをこの風に乗せて
~ゆうやけこやけ
そんな音楽が鳴り出して、
龍太は立ち上がる。
「謝れば、きっと…」
その声は震えている。
びゅん
と、強い風が吹いた。
夕焼けの、赤に
紙飛行機の、白が
綺麗に映った。
龍太の目に、その瞬間が焼き付いた。
やがて、紙飛行機は龍太の横に落ちた。
子供の作った紙飛行機。
「…ん?」
拾ってみると、見覚えのある紙だった。
元々持っていた紙を広げる。
紙飛行機の紙を広げる。
「……っ!」
まったく同じ内容の紙だった。
何より驚いたのが…
羽柴(はしば)花織(かおり) 0点
と、書かれていたことだった。
周囲を見渡しても
学生は自分以外見当たらない。
綺麗な折り目のついた紙の持ち主は
どこにもいなかった。
拾ってしまった以上、
その場に置いていくわけにもいかず
持って帰ることにした。
「どんな奴だよ、これ…」
自分の赤点を棚にあげて呟いた。
「俺は…これより、ましか」
龍太は赤い夕焼けの濃い方へと歩き出した。