君の星、僕の星
この若い美容師の瞳に、私はどう映っているというのだろう。
週刊誌を読むフリをしながら忙しなく動く手元ばかり見つめてしまう。

彼の着ている黒のVネックセーターから覗く、浮き上がった鎖骨。

この首にはどんなネックレスが似合うだろう?



「このままちょっと時間置きますね。染みたりしたらおっしゃって下さい」



頭の中で描いていたネックレスのデザイン画が、瞬時に消え去った。


「ええ。」


にっこり笑い頷き返すと、彼はその場から離れていく。



出会った人に似合いそうなアクセサリーを想像してしまうのは、アクセサリーデザイナーをやっていた頃から抜けない癖だ。


「……」


自分の左手薬指を見やる。

結婚指輪を自身でデザインするのが夢だった。
夫の英俊とお揃いのものだ。

気合いを入れて作っただけあって出来映えには今でも最高に満足している。




近々、外す事になるかもしれないけれど。
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