君の星、僕の星

「奥様の黄体機能の不全だと思われます」


2年前、不妊治療のために通い始めたクリニックで医者にそう言われた。
前回行った採血検査の結果を聞きに、英俊と一緒に訪れていた。


「……オウタイキノウ?」

「黄体ホルモン……いわゆる女性ホルモンの一つなんですが、これを分泌する黄体が上手く機能していないという事ですね」

「それが不妊の原因になるんですか?」

「可能性として考えられる、という話です」


英俊と結婚して5年。
子供は自然に授かるものだと思っていた。


「先生……それじゃ」


心臓の鼓動が速まり、自分の声が震えているのがわかる。


「子供が出来ないのは私のせいなんですか?」

「おい、」


肩を強く抱かれ、隣に夫がいる事をようやく思い出した。



「悲観する必要はありませんよ。ホルモンを補充する治療を続けてやれば、自然妊娠の可能性は充分にあります」


医者が私の目を見て力強く言う。


続ける?って、どれくらいの期間なんだろう。
お金は幾らかかるのだろう。

私は既に38歳になっているのに。



「瀬戸さん。赤ちゃんに会うために、一緒に治療を頑張っていきましょう」

「…………はい」



私の肩を抱いたまま
夫は何も言わなかった。
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