君の星、僕の星
翌日は朝から晴天だった。
体育館の窓から覗く高い空が、青く澄んでいた。
『まるで皆さんの門出を祝うかのような、雲ひとつ無い青空〜』と来賓挨拶にもお決まりのフレーズが盛り込まれている。
卒業式は、滞りなく進む。
いつもおちゃらけている男子も、何かにつけて反発ばかりしている女子も。
思春期の私たちに寄り添ってくれた保護者も、毎日顔を合わせている先生も。
皆が無理してよそゆきの顔をしているから、館内の空気までぴしっと張りつめたものになっている。
「佐藤 未央」
「はい。」
マイク越しに名前を呼ばれ返事をする。
卒業証書を受け取るため壇上に上る途中で、離れた席に座るアヤに目配せされた。
黒い頭ばかりが整然と並ぶ中、アヤの茶髪はとびきり目立っている。
「佐藤さんは大変優秀でした。これからも頑張ってね」
マイクが拾わない程度の声量で校長先生にそう言われ、私も笑顔を返す。
両手で証書を受け取った途端、拍手が波のように押し寄せる。
ステージから降り自分の席に戻る最中、さり気なく観覧席に目をやった。
松田先生の姿は見つけられない。
……保護者席にいるのかな?
後ろを振り返ろうとした瞬間「卒業生、起立。」の声が響き、慌てて視線を戻した。