君の星、僕の星
『6月27日。朝8時になりました……』
アヤが持参してきたのは、何とも素朴なパンだった。
既に切り分けられているそれは大きさもバラバラでえらく不格好だが、そういうものなんだと彼女は言い張る。
賑やかしにつけたバラエティー番組を眺めながら口に運ぶ。
「バナナの味がする」
「わかる?一本丸々入ってるの。あとクルミとチョコチップ」
「ふぅん。普通に美味い」
もったりと喉に残る甘さを最後にお茶で流し込んだ。
先に食べ終えたアヤは、狭いテーブルに広げた雑誌を楽しげに読んでいる。
「達也って双子座だっけ?」
「いや。牡羊座」
「あれ?双子みたいにそっくりな弟がいるから、双子座かと思った」
「どういう理屈なの、それ」
彼女の笑顔を見ながら、ふと思う。
普通の女子大生は、出会って間もない男友達の家に休日も押し掛けて手作りパンなんて食わせるものなのだろうか。