君の星、僕の星
下ろしたままの腰を上げられないほど全身の力が抜けた。

意味もなく下腹部をさする。


妊娠してない。
してなかった。

して、なかった。



「なぁ、んだ……」



気が付いたら泣いていた。

嗚咽を噛み殺そうとしても、食いしばった歯の隙間から声が漏れ出た。



「……っ」



安心していた。
心から安心していた。


結局私は、何の覚悟も出来ていなかった。


瀬戸さんの子供がお腹にいるかもしれない。
彼の家庭を壊す事になるかもしれない。
達也を……周りの人達を傷つけるかもしれない。


本当は、怖くて怖くて仕方がなかった。


彼に最後に選ばれる奥さんが羨ましくて、悔しくて。
背伸びをして不倫なんかして、大人になった気になって。


同時に達也の彼女であり続ける事を望んだ。


私は
ただ自分が居心地のいい場所に、いつまでもぶら下がっていたいだけだったんだ。
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