アイビー。
その後壱がお父さん達を呼んで。

いつの間にか、そこには二人だけ。

「…大丈夫か?蒼依」
「……」

「…おーい」
目の前で手をひらひらさせてる壱。

色んな気持ちがありすぎて。
何を発したらいいのか分からない。

「……なさい」
「ん?」
「ごめん…なさい」

安心したからなのか。
きっと、違うんだけど。

涙がボロボロこぼれ落ちる。

壱はギョッとして。
「なんで謝るんだよー」
って涙を拭う。

「…ごめんね。ごめん…。怪我させて、ごめんね」
謝りたいことは、たくさん。
いっぱいありすぎて。
「そんなん全然いいんだって」
本当に謝りたいのはこれじゃないの。
怪我させたことももちろん謝りたいけど。

もっともっと、あるの。

「…ごめんなさい…」

生まれて初めて。
あんな目で自分を見られてることに気付いた。

本気だった。
本気の、殺意だった。
『殺してやる』『恨んでやる』
って。
ひしひしと伝わって。
怖くて、怖くて。

今までそんなに深く考えたことなんてなかった。
ただ、言われた通りに縁を切ってた。

どうして繋がった縁なのか、なぜ切りたいのか、どんな縁なのか。
なにも知ろうとしなかった。

壱を縛り付けて。それが可哀想だと突き放して。
結局守らせて、傷つけて。
縛ってるのは私自身。

「ごめんなさい。」
ごめんなさいしか出てこない。

「そーゆう時はさぁ。」
壱の手が優しく頭に置かれる。
「助けてくれてありがとう、でいいんじゃない?」
ニコニコって。
もう怖くないよー、って。
小さい子供をあやすみたいに。

撫でられた頭からどんどん暖かさが身体に戻ってくる。

「…助けてくれて、ありがとうっ」

「どーいたしまして!」
へらっと壱は笑って、
腰が抜けてる私をおんぶして家の中へ連れてってくれた。

「小さい頃からやってた格闘技が、やっと役に立った。」
嬉しそうに。
カッコよかっただろー、なんて話す壱に。

ごめんねって。
心の中で謝った。


『嫌いにならないで…』
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