アイビー。
手当が終わって壱とお母さんが戻ってくる。



「壱、大丈夫…?」
「おう、へーきへーき」

「そんなんつば付けときゃ治るよなぁ」
「うっせ」

お父さんの言葉に笑って返す壱。

「あ。蒼依。」
壱はこっちを向き直す
「これからはやっぱ、待つから。怖い目に合わせてごめんな」


なんで、壱が謝るの。
「ううん、私こそ…ごめんね」

また謝って…と眉間に皺を寄せた壱は

「じゃあ、今のごめんは一緒に居たくない発言に対する謝罪ってことで!」
にひっと笑う。

「あれは、一緒にいたくない訳じゃなくて…」


もし。血縁。
私たちの関係を縛る縁が切れてしまったら。


壱は離れてしまう?
もうこの笑顔を向けてくれなくなる?

あの目で、

私を見る…?

「蒼依ちゃんには口の悪い番犬がついてるからね、安心して」
「うるせえっつの!親父は」

パパから、いつの間にか親父になって。
私の方が高かった背は抜かれてしまった。

壱の顔を見るには、見上げなきゃいけなくなった。

でもこれは幸いかもしれない。

上を見たくなくて、
ただ、下を見ていた。
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