如月探偵事務所‼︎①〜謎の力と仲間達〜
「冬雅くん…薫くん…葵くん…?」

声がした方には
病院の3人組が立っていた

一体どういう事…?
それにみんなボロボロだし…

「ほら、翠さんこれで分かったでしょ
彼女は記憶が…」
ふと葵くんが口を開いた


「だ!だめ‼︎」

私は考えるよりも先に大声を出していた。

だっ。だって今…。
絶対私の記憶が無い事言おうとした…


だめ。誰にもバラしてないんだから。

お母さんにだって言ってない
もちろんみどにぃにも。

1部が消えただけだし
生活に何の支障もないし

別に無理に取り戻そうとも…




大声で葵くんの言葉を遮った後
凄い冷や汗をかいているのが分かった。

「あぁ。言われなくても
今のでかなり分かったよ。」

私の大声で静かになったからか
みどにぃの声がよく聞こえた。



え。今なんて言った…?

「ごめん。薄々気付いてはいたんだが…」

そう言いながら
みどにぃは私を力強く抱きしめた

「みどにぃ苦しい。それに何に気付いたの?
私は大丈夫だよ?それよりこの状況は…?」

必死に話をそらそうと
みどにぃの腕の中でもがきながら
そう言った

「大丈夫だ。お前記憶ないんだろ。
俺には嘘つかなくて良いから」

そう言ってさらに強く私を抱きしめた

「えっみどにぃ何言ってるのさ。
記憶失くしたりしてないよ。
大丈夫。大丈夫だから」

「大丈夫じゃねぇだろ‼︎
お前、ここに何度も来たことあるんだぞ。
お前、ここの事務所のメンバーだぞ。
お前、あいつらを知ってるんだぞ。
お前、ここが好きって言ってたんだぞ。」

「えっ……。」


ドクンッ、、


私がここを知ってる


「だっ大丈夫だよっ
ちょっとしたジョーク‼︎
覚えてるよ…ここの…こ…と…」

そう言いながら私は
みどにぃの腕の隙間から
周りを見た

本当にどこかの探偵事務所のような
どこかのオフィスのような
灰色の机が向き合って並べられてて
ローラー付きのくるくる回れる
椅子がそれぞれについてて
1番奥には大きな机と
立派な椅子…あれは社長席…?
ドアから向かい側の壁には
沢山の本棚とそこに並べられてある
沢山のファイル…

ドアの横のコルクボードには…

写真が…

私が…笑顔で
皆んなと肩を組んで…写る

写真が…



知らない。


知らない。こんな所知らない。
分からない。
葵くんも、冬雅くんも、薫くんも、
知らない。分からない。
病院で初めて会った…。



初めてじゃなかった…。


こんなに楽しそうにみんなで笑ってる


私もこんなに楽しそうに笑顔で写ってる。


知らない、

何が会ったのかも何も


覚えてない…。




何も…覚えてない。

覚えがない。




「ごめん。
お前をこんな目に合わせたのは
俺たちのせいなんだ。

ごめん…。ごめん。」


何でみどにぃが泣くの…?

皆んなも何とか言って…

皆んなを見ると


えっ…

何で皆んな
そんな悔しそうな顔するの…?

葵くん…?
冬雅くん…?
薫くんまで…?


翔も泣いて……。



「大丈夫だよ…
わ。私はっ。だっ…
だいじょっ…。」


頬に生暖かい
何かがつたったのが分かる…

だめ…なのに…


だって生活に支障はなくて
隠し通してたほうが良かったはずなのに


泣いちゃったら
認めるようなものじゃん。


だめ…なのに…










涙が溢れて止まらない…











記憶が無い事自体がとても


怖い


その記憶が
皆んなとの楽しい思い出で…
それが消えちゃったなんて…




とても…

悔しい…辛い…悲しい…。


全然皆んなとの記憶ないのに…




だけどそれ以外にも
何かの感情があるかのように
私の目からは自然と涙が溢れてきた。

< 16 / 17 >

この作品をシェア

pagetop