サヨナラ愛した人【短編】

そこから30分歩いただろうか、気付けばアイツのいた家に着いていた。

手元にある花束をみる。その可愛いさは、美しさは渡された時と変わらずそこにある。



──永遠の花か、



死んだ人にそんな花贈っていいのか今更だが心配になる。

買ってしまったものはしょうがないのだが。


よし、行こう。


そう決意し家のチャイムを押す。

「理央ちゃん?」
扉が開き美羽さんが出てくる。
お化粧もしていて相変わらず綺麗な美羽さんだがやっぱり普段よりも疲れているのが分かる。

「来てくれて良かった...どうぞ、中入って。」

美羽さんはそれでも優しい表情で私を招き入れてくれる。
美羽さん、コレ...と花束を渡す。

わぁ...可愛い!と喜んで受け取ってくれた。
あっちょっと待っててね。と言って封筒と小さな袋を持って来てくれる。

「これ、あの子が最後まで大切そうに守ってたの。きっと理央ちゃんへのプレゼントだから...。受け取ってね」

そう言って私に渡してくれた。

私はそれを受け取り言う。

「美羽さん、今まで全く顔出さなくて、美羽さんに心配までかけてしまって、本当にごめんなさい。でも、もう大丈夫です。」

私はもう美羽さんに心配は掛けたくない。


これ以上美羽さんに背負わせたくない。


そんな私のそんな気持ちに気づいたのか、ちょっと寂しそうな微笑みを見せる美羽さん。

「理央ちゃんは強い子ね。分かったわ。でも辛くなったらちゃんと吐き出すのよ。私にでもいいんだからね。」


あぁ、なんて素敵な人だろう


ツンと込み上げてくる涙を堪え、
精一杯の笑顔で私は言う




──ありがとうございました。と




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