私限定の甘さ

「なぁ、西野」


急に笑うことを止め、真剣な声音でそう言う。


「…へ?」


「ちょっと来て」


「ちょっ!?」


急に腕を引っ張られ、ついた場所は、近くの空き教室。


「響也くん、いきなりどうしたの?」


そう聞いてもいつもの優しい笑顔は向けてくれない。

みんなが‘‘クール’’と言う無表情で私を見つめる。


「なぁ、西野」


「な、に?」


「西野は俺に好きな人がいるって言ったよな」


「うん」


「西野ならさ、好きな人に恋人がいたらどうする?」


「それは…」


「告白する?それとも諦める?」


「…わかんない」


私の場合、俊が私を好きでいてくれた。

だから、片思いの時期はなかった。

だから、わかんない。
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