あなただけだった
そして、卒業式当日。


『ユカコ、泣いてんの〜?』

直也が私をからかいに来る。

『もぅ!うるさい!だってみんなこれから別々の高校に行っちゃうんだよ!寂しいじゃん!』

『そうだなぁ。そんなに寂しいなら、これやるよ!大事にしろよな。』

直也から渡された物は学ランのボタン。
直也の学ランを見ると上から二番目のボタンだけがなかった。


『これ…第二ボタン!?これ野亜にあげなくていいの?私、もらっていいの?』

『おぅ。ユカコにやる。仲良くしてくれたお礼。』

『ありがとう、直也。大事にするね。高校行っても頑張ってね!じゃあね、バイバイ!』

『ユカコも頑張れよ!じゃあな!』


直也にもらった第二ボタン。すごく嬉しかった。嬉しくて直也の背中を見送ったあと、一人で跳びはねた。


これからは直也と違う高校に通う。いままでみたいに毎日会えなくなる。次、いつ会えるのかさえも分からない。もしかしたら、もう会う事もないかもしれない。この頃、携帯なんて持っていないのが当たり前だったから…。


だが、私は不思議とそこまで寂しくはなかった。

また、どこかで会える気がしていたから……
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