不埒な男が仕掛ける甘い罠

背中に数カ所、肩口にも腰にもついてると言うから、
余りの多さにアワアワと口元が震える。

なんとも言えない感情を掃きだすように、睨んでも意地悪く口元に笑みを浮かべているだけで…
私を揶揄って楽しんでいるとしか思えないのだ。

だが、仕事が終われば、無理やり車に乗せられ家まで送ってくれる。

車中、警戒していたらオープンに向けての仕事の話になり、なぜかがっかりしている私がそこにいて、でも、そんなそぶりを見せたらまた何か仕掛けてくるかもと平静を装うしかなく、精神的に落ち着かないのだ。

家の前に着き、油断していた私の手を取り指先に口づける男に頬が熱くなる。

その頬を撫でながら

「おやすみ…また明日な」

と言い、帰って行く車のテールライトを見送る私。

こんな事が続いて家に帰えるとぐったりとして、再び外出する気力もなく、拓真と連絡が取れない事を気にしながらもなぁなぁにしていた。

早く終わりそうな今日こそは、拓真と話合わなければと思っていた。

Aliceを閉めて、新ちゃんのカフェのオープン準備に取り掛かる。壁を塞いでいた板を外して通れるようにし、ソファなどにかけてあったビニールカバーを1つ1つ外し、簡単に清掃して今日はおしまい。
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