不埒な男が仕掛ける甘い罠

「唯が困ってるだろう」

1番、困らせているのはあなたですけど…

カウンター越しに私の肩を抱き寄せる新ちゃん。

「先走って、ごめんね」

手を合わせ、首を傾げ可愛らしく微笑む美鈴さんを見たら何も言えずに

「…いいえ」

苦笑いするしかなかった。

店内を見渡し、何もする事がないと判断した美鈴さん

「じゃあ、今日はもうあがっていいわよ。明日、よろしくね」

「はい…お先に失礼します。おやすみなさい」

荷物を持って帰ろうとすると

「送って行く」

「えっ、いいよ。まだ、お仕事残ってるんでしょう?」

今日こそは、送ってもらうわけにはいかない。それに、まだ美鈴さんと明日のオープンに向けての準備があるはずと視線を向け助けを求めた。

それなのに…

「もう、ないわ。唯ちゃんの案は頂いたし、細かい事は新が考えればいいのよ。だから、送ってもらいなさい」

「おい、言い出したのはお袋だろう?俺に丸投げかよ」

「早く上がるんだし、ご飯でも食べながら唯ちゃんと決めたら?唯ちゃんの案だし‥ね」

ね…ってウインクされても困ります。

不機嫌丸出しだった新ちゃんだけど、美鈴さんの提案にコロッと態度を変えた。
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