不埒な男が仕掛ける甘い罠
だけど…
「…拓真に会ってくる」
唇を弄ぶ指先が止まった。
「俺は大事な女を男と2人きりに何回もさせるほど、広い心は持ってないんだけど…」
艶めいた声で唇をそのまま左右になぞり、妖しく見つめる男。
その瞳に魅力され、ゴクッと喉が上下する。
「唯は、誰を選ぶの?おれ?あいつ?」
「それは…」
その自信満々な表情
憎たらしい…わかっているくせに私に言わせようとするなんて…だから、言いかけた言葉を飲み込み視線を逸らした。
「それは?なに?」
「た、拓真とちゃんと話をしてきてからじゃダメ?」
「聞いてなかったの?2人きりにさせないよ…ねぇ、ゆいの好きな男は誰なの?」
顎をクイっと持ち上げられ、視線が絡まる。
なんともいえない男のせつない表情と声に心がキュッと締め付けられる。
あの自信満々な表情が、どうして、こんな不安気に変わるのだろう?
愛しさに頬に手を伸ばした手首を掴んだ新ちゃんは、自分の唇の上に私の指先を触れさせた。
「…私の好きな人は…」
指を食む唇の感触に痺れたようにジンジンしている。
答えないでいると
「お前の好きな男は、俺だろ」
艶めいた声と違う煽情的な声が指先で囁いた。