不埒な男が仕掛ける甘い罠

身体中を支配していく声に諍う術が見つからない。

頭上から足の爪先まで一気に走る痺れた感覚

それは、まるで彼の唇から電流が流れたようなビリビリした感じで、触れていた指先がビクンと跳ねた。

それを見逃さない男は、更に魅惑的な笑みを浮かべて誘惑する。

「何も考えるな…唯、心のままに俺に堕ちてこい」

ぎゅっと下唇を噛む私。

目の前の誘惑には勝てなかった…

「…新ちゃんが、好き……」

目尻にシワを作り、くしゃくしゃになって嬉しそうに笑う新ちゃんは、私をぎゅっと抱きしめた。

「やっと聞けた…」

ホッとしたような小さな呟きだったけど…確かに聞こえた。

強く私を抱きしめる体が小刻みに震えるほど、彼の私への思いが伝わってくる。

自信満々でいつも余裕の表情を浮かべていたのは、不安を隠す為のパフォーマンスだったのではと思えてくると、そんな彼が愛しくて、大きな背を抱きしめ返していた。

震える体が落ち着くように、背を撫でながら触れる頬同士をすり寄せる。

もう、気持ちを誤魔化さないから不安にならないで…と伝わるように、何度も…その度に首筋にキスを降らせる新ちゃんは、

「…唯、好きだ」

と、何度も呟いていた。
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