不埒な男が仕掛ける甘い罠
首筋にかかる吐息と唇が首筋に触れる度に、体はあの日を思い出して私の意志とは関係なしに疼きだす。
そんな自分がふしだらに思えてきて抱きしめる腕を離し、彼の胸を両手で押した。
驚いた新ちゃんは一歩下がったまま、囲う手は離さない。
「どうした?」
頬を赤らめ、潤んだ目を見られたくなくて俯いた私の顔を覗き込む新ちゃん。
駐車場を照らす灯で、欲情した私がきっと見えているだろう。
それでも、まだ、このままこの腕を取る訳にはいかない。
「…拓真とちゃんと別れてくるから、その後は私を新ちゃんの彼女にしてくれる?」
「あぁ、もちろん。だけど…1人で行かせない」
譲る気のない強い口調に
ふっ〜と大きくため息をついて
「ついてきてくれる?」
「あいつと2人きりにさせないって言っただろう」
そう言って頭を撫でる手が、車に乗れと頭部を押した。
車中、拓真に電話をかけるけど…出てくれない。
まだ、仕事中なのだろうか?
とりあえず、拓真のマンションに向かうと外から見える拓真の部屋に明かりはついていて、部屋にいるのは確かだった。
ドアが開く気配に新ちゃんを見ると、運転席から降りて外に出ようとしていた。