不埒な男が仕掛ける甘い罠
インターホンの向こうの拓真が息を呑む気配がした。
そして…
ドアが開くと、目の前に立つ拓真は少しやつれたように思う。
私の後ろにいる新ちゃんに気がつき、目を見開き諦めたような表情に変わった。
それでも、言わなければお互い前に進めない。
「拓真に話があるの」
「……」
潤んだ目をして覚悟を決めたように頷く拓真に、心が痛い。
「私、拓真ともう付き合えない」
「…俺が浮気しなかったら、俺たち続いてた?」
「わからない。だけど…ベッドでピアスを見つけた時も、絵里さんといる拓真に会った時も悲しくて裏切られったって気持ちが強かっただけで、嫉妬するほどじゃなかった。でも、新ちゃんが私以外の女の人といるって想像しただけで嫉妬で胸が苦しくなる。Aliceで働いているのも、心のどこかで新ちゃんとの繋がりがほしかったからで、絵里さんとの事がなくてもいつかは拓真を裏切ってたと思う…」
拓真は、もう十分だというように顔をしかめて左右に顔を振った。
「俺と別れるじゃなくて、裏切るって⁈…そいつと寝たのか?」
ポツリと呟くように背後にいる新ちゃんを鋭い視線で見つめ、ぎゅっと拳を握った手が震えていた。